煙草 投稿者:ナナシノナナシ

深夜に道を歩いていると煙草の自動販売機を見つけた。

少し前のタイプのようでタスポの読み取り装置がない。
置いてある煙草のラインナップを見て若い頃に愛飲していた物があった。
ポケットを漁り小銭を探す。
丁度あった。
自動販売機に小銭を飲ませる。カタン
そんな音を確認すると自動販売機の口に手を伸ばす。

そんなときふと昔に聞いた怪談を思い出す。
購入した物を取り出そうとしたら中から手が伸びてきて引きずり込んでくる。
確かそんな話。

伸ばした手が少し、強ばる。
しかし直ぐにバカらしくなりさっさと煙草を取り出した。手は出てこなかった。

深夜の風に吹かれながら昔の思い出を口に運びながら家路についた。

翌日、妻にこの話をした。
するとあの通りに自動販売機は確かにあるが、もう電源が通ってないはずだと言われた。

そんな馬鹿なと思い、昨日の服のポケットを確認する。
そこに煙草は無かった。

まるで煙のように消えてしまった煙草に、対してまだ一本しか吸ってないのになどとすっとんきょうな事を思いつつ私は仕事に向かった。

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