緑の下半身 投稿者:らぶ

父が体験した話です。

ゴルフ場に勤めていた父は車で通勤していました。山の中を通ってかよっており、視界の悪い日も度々あったそうです。
その日も霧が出ており、夜という事もあって視界は最悪。ゆっくり山道を降りていたそうです。
カーブを曲がったときにそれはライトに照らされました。

人間の下半身のみで、上から下まで全部緑色の何かでした。

えらいものを見てしまったと冷や汗をかきながら山を降り、落ち着くために一度家で待つ祖母(父からは母)に電話をしたそうです。盛り塩持っとくからかけてから入んなさいと言われて帰宅時には塩を振って家に入ったそうです。

特に何があるわけでもなく眠りについた父は翌朝、祖母からこんなことを言われたそうです。
「あんた昨日の夜どこいこうとしてたの?」と。
いやいや起きた覚えはないけどなんの話だ?と聞くと、夜、祖母が寝ようとした時に2階から父が降りてきたんだそうです。「どこか行ってくるの?」と祖母が尋ねても返事はなかったそうです。玄関前まで行くと父は数秒止まりまた2階に戻っていったそうです。

いやいやありえないありえないと思っていると玄関には盛り塩が左右に2つ。
「あんたが帰ってきた後に一応盛り塩置いといたのよ〜これあってよかったわね笑」と祖母に言われて朝から肝を冷やしたというお話でした。

カテゴリー: みんなで創る百物語

失敗したよ 投稿者:Mari

十階建ての、見た目はごく普通のマンションの話です。
数年前、六階に家族で住んでいた、当時、まだ小学校中学年の少年には、とある悪趣味な趣味があったそうなんです。
それによって、悲惨な事件が起きてしまいました。

 その少年は両親が共働きで、学校から家に帰ると、どちらかが帰ってくるまでは一人きり。少年は友達がいなかったので、ゲームぐらいが唯一の楽しみだったとか。
 でも、毎日ゲームをやっているうちに、少年は、それだけでは飽きてきてしまいました。
 だから、なんとなく、ベランダから物を落とすことを趣味にしました。最初は小さなゴミのような物、次は何も入っていないペットボトル、というように、どんどん落とす物は大きくなっていきました。

 少年の住むマンションの近くは人通りが少なかったので、誰にも目撃されることがなかったことから、少年の行動は悪化していきました。
 そして、とうとう植木鉢を落とす、なんていうとんでもない趣味になってしまったようです。
 なんでも、少年の母親は、昔ガーデニングが趣味だったそうで、家には空の植木鉢が大量にあったんだとか。
 少年は、両親に対して不満があったのかもしれませんね。だから、植木鉢が激しい音を立てて割れる光景を見ると、たまらない快感を味わっていました。

 そんなある日、少年がいつものように植木鉢をベランダから落とそうとすると、ベビーカーに赤ちゃんを乗せた女性が下を歩いていました。
 少年は、その日学校で嫌なことがあったこともあり、ヤケになって、そのまま植木鉢を落としたそうです。
 すると、女性のほうに植木鉢が激突し、女性は意識不明の重体になってしまったんだとか。

 少年は、大人たちに訳を聞かれて、ずっとこう言っていたそうです。
「失敗した」
 と。皆が、人に当ててしまったことを失敗したと言っていると思いました。
 ところが、違いました。

 そのうち、こう言い出したのですから……。
「失敗したよ。赤ちゃんのほうに当たっていたら、もっと面白かったのに」

カテゴリー: みんなで創る百物語

無人島 投稿者:弱音伯(よわね はく)

友ヶ島

十年以上前の夏の話です、僕の家族と友達の家族で無人島に二泊三日でキャンプへ行きました。
当時小学生だった僕と友達ははしゃぎまくって海で泳いだり、バーベキューを楽しんでいました。
三日目の朝、親たちが帰り支度をしている間に僕と友達は近くの展望台へ行くことにしました。

展望台は丘の上にあって、ジグザグな坂道を登れば着くのですが、当時体力のなかった僕には結構な道のりでした。
坂道の周りにはたくさん気が生い茂っていて、ほとんど森のようでした。

半分くらい歩いたところで僕の前を歩いていた友達が急に
「ハクちゃん(僕)…..」
と言って立ち止まりました。

「どうしたん?」と言おうとした瞬間、気づいてしまいました。

何かがいる

僕達の前に何かがいるのを感じました、ですが前に人が歩いているわけではなく
猫などの動物がいるわけでもありません。

「…..」

僕と友達はその場から動くことができませんでした。

たった数分が数十分、数時間とも錯覚しはじめたころ
背後から首筋に、生暖かい風が吹きました、今思えば吐息と全く変わりなかったと思います。

その瞬間、僕と友達の恐怖感は一気に限界に達し
「ハクちゃん逃げよ!」
叫ぶように言って友達は自分たちのテントの場所に向かって走り出し、僕もつられて走りました。
全速力で親のところに戻った僕達は、坂道での事を親に話しました。
けど親は「隣に海があるんやから温風でも吹いたんやろ」と笑って信じてもらえませんでした。

友達はもう一度行って確かめようと坂道を登ろうとしましたが
親達がちょうど帰り支度が済んだあとだったので、そのまま帰ることになりました。

あれ以来無人島に行く機会はなくなり、友達とも疎遠になりました。

数年後、高校二年の頃に急に無人島のことを思い出し、興味本位で学校のPCで無人島のことを調べてみました。

その島には、第一,第二,第三砲台跡があり
第二次世界大戦の最中に海外艦の侵入を防ぐ役割を担っていたようです。
どれほどの死者が出たのか、そこまでは調べることができなかったのですが
僕と友達が感じたのは、戦時中に砲台に関わっていたモノだったのかもしれません。

カテゴリー: みんなで創る百物語

前から見た後ろの鏡 投稿者:GSY-UcD

街灯の灯りが、パチパチと点滅し寄ってくる虫を歓迎している。

更に、その下では疲れきり片手にビニール袋を引っ提げて歩く女性が1人いた。

『はぁ…残業とは、いえ。』
彼女は、スマホを取り出して時間を見た。
『もう22時なのか…セビリアの理髪師間に合わないな。』
大学の後輩に薦められた作品で、今日のリアルタイムで見たかったが願い叶わず。
『もう、今日は残業しない予定だったのに!』

そして、自身が住むマンションに着いた。
先月引っ越して来たばかりだが…このマンションには様々な機能がある。
エントランスにはセキュリティ用のタッチキーを当てると自動ドアを開き同時にエレベーターも1階に来るようになっているのだ。

そして降りてきたエレベーターに乗り込む。

『ええと、6階っと。』
彼女が住むマンションは、エントランスでタッチキーを当てるとエレベーターに登録情報がいき呼び登録してくれる。

そして、扉が閉まりエレベーターが動き出す。
すると、上部よりカラカラと音が鳴っていた。

『え?何,この音?』
彼女は、不快感を感じたがエレベーターは気がつくと目的階に着いた。
すると、ドアが何かに引っかかる様に開かなかった。
『え?何で、開かないのよ!』
エレベーターのドアは開こうとするが結局開かずにアナウンスが流れた。
「最寄り階まで運転します、最寄り階まで運転します。」
するとエレベーターは、ゆっくりと下がり始めてやがて5階に着いた。
「足元に気をつけてお降りください。足元に気をつけてお降りください。」
ここでは、ドアが普通に軽やかに開いた。
『もう、何なのよ…本当に。』
そして、エレベーターより降りて階段で6階に向かった。
『あの会社ちゃんと点検しているのかしら?』
最近、マンションの予算節約の為にエレベーターの点検をメーカーから安いメンテナンス会社に変えたのだが…その時からだろうか不具合が度々見られるようになった。

『やっぱり安いだけじゃ駄目ね。明日、管理人さんに言おう。』
そして、自身の部屋に着いた。
表札には、白鳥(しろと)と飾ってあった。
彼女の名前は、白鳥 結幸(しろと ゆこ)。
仕事は、雑誌の編集に携わっている。

『ただいま~まぁ誰もいないけどね。』
白鳥は、部屋に入り取り敢えず着ていたシャツを脱ぎ洗濯機に投げ入れスカートを脱ぎ冷蔵庫を開けた。
その中から、発泡酒を取り出しコンビニで買ってきた肴を出した。
そして、発泡酒の封を開けてゴクゴクと飲み満足したかのような放心な表情をしていた。
『あぁ~生き返る。そいやさぁ吉備部長もだけど…太朽の野郎っ!明日覚えてろ~!』
今日の仕事の不満を話した。
『でねぇ?ましてやさぁ…私のランチタイム邪魔しやがったんだよ?有り得なくない?』
愚痴をいい放つと、酒が進み気がついたら3缶飲んでいた。

翌朝……。

白鳥は、何時もの時間に起きるが…昨日の夜の記憶が無い。

『私…ベッドで寝たの?髪もベタついてなくメイクも落ちている…。』
ちゃんと、やってから寝たんだと1人関心していた。
『……誰も来てないよね?』
テーブルの上には、夜飲んだ発泡酒と肴があるのみ。
『まぁ、良いか。』
白鳥は、顔を洗いメイクをして着替えると冷蔵庫に入れてあるフルーツ入りヨーグルトを取り出し。
『いただきます!』
朝食として、食べた。
そして、食べ終えたヨーグルトの容器をゴミ箱に入れて部屋を出た。

6階のエレベーター乗り場釦を何の気なしに押すとエレベーターが上がって来てドアが開いた。
そのままエレベーターに乗り込み1階の釦を押すとエレベーターは1階に向かう為、下がり始めた時に白鳥は思い出した。
『そういえば、昨日のドア開かなかった事を管理人さんに言わなきゃ!』
白鳥は、1階に着くと管理人さんの部屋に向かった。

『おはようございます!真郷さん!』
真郷と呼ばれる管理人は、読んでいた新聞を畳み小窓を開けた。
「おはようございます、白鳥さん。今日も仕事ですか?大変ですね毎日。」
真郷は、笑顔で受け答えしてきた。
『はい、ありがとうございます!じゃなくて、実は……。』
白鳥は、昨晩のエレベーターでの事を話した。
「なるほど…今週の頭に点検に来たばかりなんだけどね?わかりました、今日見て貰うので安心してください。」
真郷は、日誌にスラスラと白鳥の話を書いていた。

『では、宜しくお願いしますね?』
白鳥は、軽く会釈をする。
「白鳥さんも気をつけて行ってらっしゃいませ。」
真郷は、軽く手を振り白鳥を見送った。

そして、今日も会社に着くと足早に自分の部署に入り席の前まで来た。
すると、長い髪で長身の男が近づいてきた。
「おはよう白鳥君。昨日は、急な残業をお願いしてしまって申し訳無かったね?」
『おはようございます、吉備部長。いえ気にしてませんから大丈夫です。』
その男は、上司の吉備部長だった。
その見た目と性格の良さから、部下から信頼度は高いのだ。
「あっ!ごめん白鳥君っ!ちょっと、電話が…。」
『いえいえ、大丈夫です。』
そして吉備部長は、携帯電話に出て話始めたが少し会話が聞こえてきた。
「もしもし…星南?えっ?本当にかい?わかった、じゃあ今日は早く帰るからさ。」
「ふふ。」
吉備部長の顔が、幸せそうだった。

『朝から何か、良い事があったんですか?』
「ああ、妻から何だが…娘の作品が最優秀作品に選ばれたんだ。妻に似て、お話を考えるのが好きだからな。」
吉備部長の妻の星南さんは、元々この会社に作品を投稿している作家さんで私とも親しかった。
『ご家族の仲が良くて何よりです。じゃあ、今日は早く帰ってあげた方が良いですね?』
「そうだな。今日は、御言葉に甘えよう。」
すると…息を切らしながら入って来た男が居た。
「ハァハァハァ…ししし白鳥さんおはようございますとススすみませんでしたぁっ!」
その男は、開幕白鳥に謝罪した。
『あっ…太朽君?何か、要かしら?』
白鳥は、太朽という男をまるでゴミを見るかのような眼で見た。
「いや、その…本当に。」
『まぁ…今日は、お昼ぐらい奢ってね?それで許してあげるわ。』
「わぁっっ!ありがとうございます!」
で、朝から何か色々あり1日の業務が終わった。
『じゃあ、今日は定時で帰ります!』
「あぁ、お疲れ様。」
その私の言葉に反応し、帰る支度をしていた吉備部長も言葉を掛けてくれたのであった。

そして、白鳥は自身に住むマンションに着いてエントランスにてタッチキーを当てようとすると管理人の真郷が近寄って来た。
「こんばんは、白鳥さん。今日もお疲れ様でした。」
『真郷さんも、今日もお疲れ様です。』
「そう言えば、今日はエレベーター屋さんに来てもらって見て貰ったんだけど…何とも無いって言われたんだが…もうあのエレベーター屋さんの対応が酷いから明日またメーカーさんに見て貰う事にしたよ。」
温厚な真郷さんが、言うくらいなんだから結構酷い対応だったのだろう。
『わかりました、ありがとうございます真郷さん!では、お休みなさい。』
「ええ、お休みなさい。」
白鳥は、真郷に軽く会釈をして開いた自動ドアの中に入りエレベーターに乗り込んだ。
そして、自動的に6階が登録されてエレベーターが上に上がって行く。

すると、昨日聞いたエレベーターから聞こえたカラカラ音から明らかに違う金属を抉るような音がした。

『え?本当に大丈夫なの?』
白髪は、心配しながらも気がつくと6階にエレベーターは着いた。

が…昨日と同じくエレベーターのドアは開こうとするが何かに引っ掛かかるよう開かなかった。

『また?もう…本当に、嫌になる。』
そして…エレベーターのアナウンスが鳴り始めた。
「最寄り階まで運転……ももももっ」
『ん?どうしたのかしら?』
「モウ…、オリレマセン……。」
『え?何?』
「サイジョウカイマデウンテンシマス…サイジョウカイマデウンテンシマス。」
すると、エレベーターは動き出したが昨日の様にゆっくりでは無く通常速度で上昇し出した。
さっきの金属を抉るような音も徐々に大きくなっていく。
『え?何々っ!音が大きくなってぇ!いやぁっ!』
「コワクナイコワクナイアナタニハワタシガイッショ。」
『何を訳が分からない事をっ!そうだぁ!インターホンっ!』
白鳥は、エレベーターの受話器のマークの釦を押したが何も鳴らなければ何も起こらない。

『な、何なのよ!何でぇっ!』
そして、エレベーターは最上階につく前に上で何かが弾けて取れるような音がするとエレベーターの上に落ちた衝撃音がした。
『きゃあっ!今度は何よっ…。』
そう考えたのもつかの間、エレベーターの中の白鳥が宙に浮く感覚があった。
『え…もしかして。』
「ツギハ…サイカカイマデラッカシマス。サイカカイマデラッカシマス。」
またアナウンスが流れる。
「アハハハハハハハハハブヒャヒャヒャヒャ」
汚い笑い声が聞こえてきた。

『嫌だぁっ!止まってっ!下ろしてよ!』
白鳥は、無我夢中で必死にドア開けようとした。
『何でぇ…止まらないのよ!』
「ウヒヒヒヒ…イッショニオチルノタノシイナワタシハコレデ」
『お願いだからぁっ!止まってよ…。』

その時、白鳥はエレベーターのドアのガラス部分に人影がうっすら見えた。
恐る恐る後ろを見ると、エレベーターの中の鏡に血で染まった作業着の男が鏡から白鳥をニヤニヤと見ていた。

『ひっ!』
「キノウヘヤデオサケノミナガラハナスキミノグチハ面白かったよウヒヒウヒャヒャヒャ。」

昨日…気がつかず無意識で白鳥は部屋に招き入れていたのだ。
それに気づき白鳥は、恐怖で失禁した。

「エレベーターナイハミンナデタダシクキレイニツカイマショウ。」
「マモレナイヒトハ」
「モウ…出られません。」

次の瞬間に、エレベーターは最下階に勢いよく激突して凄い音がした。
その音を聞いて、管理人の真郷が出てきた。
「な…なんと、急いで連絡を!」
下からグシャっと潰れたエレベーターは、悲惨だった。その中には、頭を強打し出血した白鳥が倒れていた。
暫くして、救助隊と救急車が来たが…白鳥は亡くなっていた。
その顔は、恐怖に怯えた顔で目玉が飛び出るかのようだった。

そして…その後の調査により点検をしていたエレベーターメンテナンス会社のメンテナンス不良と安全装置が動作しないようになっていた。
その会社は、世間から糾弾されたが本来にそれだけなのか?
白鳥が、死ぬ直前に見た作業着を来た男は何だったのか?
事故の調査の際に、エレベーターのピット内には僅かながら血痕があったという。

それが、誰の物か語られるのも近いかもしれない。

カテゴリー: みんなで創る百物語

お盆に、決まりを破ってしまった 投稿者:妖怪おやじむすめ

小学生高学年の頃の話。
私は子どもの頃、お盆が大好きだった。

毎年お盆になると、千葉の母方の実家に親戚一同集まった。
母方の祖父は裕福で、土地も広く、大きな家に住んでいた。
母は兄弟が多く、6人兄姉の末っ子で、兄が2人、姉が3人だ。それぞれが結婚していて子どももいる。だから親戚一同が集まると、それはもう賑やかだった。

当日、お昼頃に車で実家に到着すると、畳敷きの大きな和室に、沢山のご馳走が準備されていた。
叔母さん達がテキパキと料理を準備し、叔父さん達が語り合っている。
両親にうながされ挨拶すると「おお、また大きくなったねぇ!」と喜ばれた。

ただ、大人達と挨拶したり世間話をするのは退屈で苦手だった。これは私だけでなく、他の親戚の子達も同じであった。
私は隙を見て和室を抜け出すと、台所でせわしなく動く叔母さん達を尻目に、隣にある居間の襖の前に立つ。
中からは子ども達の楽しげな声が聞こえてくる。

私を含め親戚の子ども達は、酔った大人達にしつこくされるのが嫌だったので、居間に避難してくるのだ。
私が襖を開けると、年の近い子から幼稚園くらいの子まで、テレビを見たり、ソファーに寝そべって携帯ゲームをしたり、持ってきたオモチャを見せ合ったり、女の子達はなぞなぞや怖い話や占いの本を読み合って遊んでいた。

居間の奥には仏壇と盆提灯、たくさんの菊の花。壁の高いところには、会った事も無いご先祖様達の白黒写真が、立派な額に入れて飾られている。私は色とりどりに幻想的な光を放ってくるくると回る盆提灯が大好きだった。
私は親戚の子ども達の中では最年長だったが、やはりこちらのほうが居心地がよかったし、みんなと遊ぶのが楽しかった。
仏壇にお線香をあげ、りんを叩き、私はすぐに子ども達の輪の中に入った。
皆とゲームをしていると、ほどなく宴会の準備が整ったと、叔母さんが呼びに来る。
ぞろぞろと和室に移動して、ご馳走が並ぶ長いテーブルの下手側に、子ども達は固まって座る。
上手に座る一族の長、おじいちゃんが乾杯の音頭を取って、宴会が始まる。
お刺身、ローストビーフ、天ぷら、煮物、海鮮焼き、漬け物、ちらし寿司にジュース。大人達はお酒。
私たちはご馳走をお腹いっぱい食べると居間に移動し、また隠れんぼやなぞなぞや怪談などを楽しんだ。

そして夕方になり、日が落ちてくると、いよいよお墓参りの時間だ。
宴会のご馳走や親戚の子達と遊ぶのも楽しみだが、私はこのお墓参りが大好きだった。
子ども達は、色とりどりの提灯を渡される。これにまだ火は点けず、大人達の後について、実家からそれほど離れていない墓地へ向かい、梨畑に囲まれた坂道をぞろぞろと歩く。
昼と夜の中間の時間。オレンジや紫やピンクの混じった、なんとも不思議な色の空の下を、私たちは影絵のようになって、なぜだか声を潜めてヒソヒソ囁きあいながら歩いた。
墓地につくと、大人達がご先祖様の墓石を水で洗い、花を供えて、みんなで順番に線香を供える。
そして墓地から帰るとき、子ども達は提灯のロウソクに火を灯してもらうのだ。
先ほどよりも日が落ちた薄闇の中に、提灯に描かれた蝶や花などの綺麗な模様が明るく浮かび上がり、その絵から透かして見えるロウソクの炎が子ども達の瞳に映ってキラキラと輝いていた。
子ども達はこれから火のついた提灯を、先ほどの居間の仏壇まで持って帰るのである。
今思うと、ご先祖様の霊をお墓から仏壇に連れて行くような意味だったのかも知れないが、その当時は単に肝試しのような感覚だった。

この時、決まりがあった。
家に着くまで、決して振り返ってはいけない、というものだった。
何故かは知らなかった。子ども達の間では、振り返ったら呪われるとか、お化けが見えるとか、なんとも子どもらしい怪談が作り上げられていた。
大人達もキツく警告するような空気ではなく、何となくそう教えられてるからなるべくそうしなさい、程度の温度感だった。何故振り返ってはいけないかなど、理由を説明することもなかった。
私たちは大事な宝物を運ぶように慎重に、そして任された使命をやりとげてやろうという、どこか誇らしげな気持ちで提灯を掲げて帰路についた。
道の左右に並ぶ梨の木々が作る真っ黒な影の中、提灯の明かりで浮かび上がるみんなの顔が可笑しくて、クスクス笑い合う。
私は列の最後尾にいてみんなの背中を眺めていたのだが、何度かこの行事を行ってきた慣れからか、はたまた和やかな雰囲気に当てられ緊張が緩んだのか、その年は、ほんのちょっとしたいたずら心が湧き上がってきた。
私は、誰にも気付かれぬよう、こっそりと墓地の方を振り返ってみた。

……

そこには、別段変わったものは何も無かった。
ただ、最後尾からのみんなの背中が並んでいる道路の光景が、誰もいない道路の光景に変わり、若干心細い気持ちになっただけだった。
なぁんだ、何にも起こらないじゃないか。
私は安心したような、ガッカリしたような気持ちで溜息を一つつき、前に向き直った。

その後、無事に仏壇まで提灯を運んだ私たちは、実家の所有する梨畑で鬼ごっこをした。
その最中、私は畑で地面に掘られた1.5メートル、深さ50センチほどの穴を見つけた。中には何やら灰色の砂のようなものが敷き詰められていた。
面白そうだと思い、飛び込んだ。
後で知った事だが、それは梨の木の余計な枝などを切り落として燃やした後の灰を捨てるために掘った穴だった。
灰はまだいくらか焼けていた。
焼けた木くずがいくつか靴の中に入り、足に痛みを感じた私は慌てて穴から飛び出し、靴を脱いだ。
足を火傷した私は、大泣きしているところを親戚のお兄さんに背負われ、病院に運ばれた。
これが、決まりを破った事によるたたりだったのか、子どもの無知と大人の不注意が重なった偶然の事故なのかはわからない。
この時の足の火ぶくれの跡は、大人になった今でも残っている。

カテゴリー: みんなで創る百物語

怖くない 投稿者:坂本ロクタク

怖い話が好きで長年怪談を読みあさってたら、霧が晴れたように恐怖心がなくなった。

私にはホラー好きの仲間がいて、よく五人で集まってホラーについて語り合った。
時には一人20話づつ怪談を持ち寄り皆で百物語をしたが、
ぶっちゃけどれもよくある話だった。

「あれの派生か…」「あれのパクリか…」「あれのオマージュ…」「元ネタあれだな…」
そんなことを言いながら、いつもの四人でホラー談義に花を咲かせた。

たまにラップ音がしたりしたが、霊障だのなんだの言い出したら、
正直なんでも当てはまる。

【行くと呪われる】って噂の心霊スポットにいつもの三人で行ったりもした。

友達はギャーギャーわめいていたが私は「怖い」というより
「もっと怖い思いをしたい」という欲の方が勝っていたため、
心に霧がかかったようにシラけていた。

私は心底、恐怖に飢えていた。

ネットで見つけた【呪いの儀式】ってやつも嫌がる友達を説得し
なんとか二人で実行した。霧深い山奥で行う儀式の最中、友達は
「お前はイカレてる!」なんて最期の間際にわめいていたが、
最終的に、儀式は私一人でやりとげた。

結局、そこまでしても「怖い」という感情は芽生えなかった。

むしろ、今では怖いと言うより正直寂しい……。

霧深い山奥に散乱した私の体を……
早く…誰かに…見つけてほしい………

カテゴリー: みんなで創る百物語

夢の中の男 投稿者:R

先日見た夢の話です。

とあるマンションに警察が大勢押しかけているところから場面がスタートしました。
犯人が住んでいるマンションにガサ入れをするタイミングのようでした。
私はなぜかその突入の場面で、隠れて遠方から犯人を狙う立場という状況でした。

警察や住人たちと共に階段を駆け上がり、犯人が住んでいるであろう部屋がよく見える別棟の踊り場で待機していました。
数分後、警察が突入したのを皮切りに犯人が外に飛び出してきました。
こちらが隠れていることは知らないはずの犯人が、外に出るなり真っ直ぐこちらを見つめ
「油断していたら殺してやるからな」と言いました。

部屋から外に飛び出した犯人は警察を振り切りこちらに走って向かってきます。
(場所がバレてる!どうしよう…どうしよう…)
そう考えているうちに、夢から覚めました。

午前4時。
呼吸はひどく荒く、嫌な汗をかいていました。
(嫌な夢だった…)
そう、嫌な思いをしたとはいえ、あれは夢なのです。
夢だから大丈夫、自分に言い聞かせながら2度寝をし、うなされつつも会社に向かう時間までなんとか眠ることができました。

支度をして会社に向かう道中、もう夢のことはすっかり忘れていました。
ホームに入ってきた満員電車から何やら視線を感じ顔を上げたところ、一人の男性と目が合いました。

夢で見た犯人の顔がそこにありました。

男はまっすぐこちらを見据えています。
目が合っている間、身体が金縛りのように動かなくなり、結局その電車には乗ることができませんでした。

それから数日経ちましたが、あれからあの男には会っておらずあの夢も見ていません。
あの男性は生きた人間だったのでしょうか?
もし生きた人間だったら…私はいつか彼に殺されるのでしょうか。

カテゴリー: みんなで創る百物語

お稲荷さん 投稿者:ぽんぬ

僕は京都出身で幼少期は伏見稲荷や千本鳥居で遊んでいました。

当時は今ほど餌付けにうるさくなかったので神社には鳩がたくさんいてエサをあげたりして遊んでいました。
親戚と遊ぶ時は千本鳥居で鬼ごっこをしたりかくれんぼをしたり。
途中から近所に住む同年代の女の子も混ざって遊んでいました。
女の子がもっと奥まで行こうと誘ってきたので僕や親戚はついていき開けた場所で寝転がったり。

気がついたら寝てしまっていて辺りも暗くなったため、そろそろ帰ろうという話になったのですが、女の子はもっと遊びたいうちに泊まりなよと言うのですが、遅くなると叱られるため帰ると一方的に伝えて帰りました。
遊びなれた場所だったのですが、来た道をいくら歩いても入り口に戻れず親戚も段々と不安な顔になっていました。
1時間くらい歩いても戻れないので女の子のいるであろう場所に戻りました。

かなり歩いたのですが、そこへ戻るまでは数分足らずでした。
親戚がお父さんに迎えに来てもらいたいから女の子の家の電話を貸して欲しいと言って女の子の家に行きました。
僕はその場で待っていたのですが待てど暮らせど戻って来ず。

女の子が進んで行った道に向かったのですが民家らしき建物はなく仕方なく元いた場所に戻りました。
数十分後、親戚がお父さんに電話したからそれまで女の子と遊んで待っていようと言うので早く帰りたかったのですが、また遊びました。
しかしいくら待っても叔父さんは来ないので不安になり泣いてしまいました。

女の子はオロオロとしだして、また遊んでくれるなら帰ってもいいよ?と言うので遊ぶ約束をしてその場をあとにしました。
するとさっきは1時間かけても出れなかったのにほんの数分で入り口につき車で迎えにきてくれた叔父と合流しました。
当然母親には叱られ言い訳や女の子と遊んでいた、道に迷ったと言っても信じてもらえず…
どこで遊んでいたのか聞かれたので話したのですが、そんな場所はないし叔父の所に戻った時間も考えても入り口から数分くらいのところでしょ、と親戚共々叱られました。
狐に化かされたのか女の子はなんだったのかわかりませんが不思議な気持ちと不安な感情、楽しかった記憶として今でも覚えています。

カテゴリー: みんなで創る百物語

夢 投稿者:MOCOTTOY

皆さんは都市伝説の「猿夢」ってごぞんじですか?
夢の中で猿の顔の付いた汽車に乗ると怖い目に合うっていうあのお話です。

つい最近の事ですが、私も見たんです。

緑色のテント屋根のようなのが付いた簡単に作られたようなおもちゃの駅、そこのホームで待っていると「まもなく電車が参ります…この電車に乗ると怖いことが起こります…ご注意ください。」というアナウンスが流れてきて、本当に猿のおもちゃの顔が付いた汽車みたいなのが到着しました。

私はこの「猿夢」の話を知っていたので「あ!この夢知ってる!!猿夢でしょ!!」っと一人で声を出しました。
するとその猿の顔が目だけで私をギロっとにらみつけて「ちッ!!」っと舌打ちをしたところで夢が覚めました。

都市伝説や怖い話を聞いて覚えていたことが夢に出てきたのかもしれませんが…。
起きてからもその夢を覚えていたため、Twitterに書き込もうとしたら何度やってもフリーズしてしまいけっきょく書けなかったので少しぞっとしました。

猿夢は、あながち都市伝説ではないのかもしれませんね。

カテゴリー: みんなで創る百物語

私が呼び寄せたモノ、 投稿者:にゃんこ

これは私が小学4年生の時のお話です。

授業が終わって図書館でクラブ活動をしていた時、ふと私は御手洗に行きたくなって友達に告げて御手洗に行くことにしました。
私の学校は校舎が2つに分かれていて、北校舎と南校舎と名前がついていました。南校舎には、職員室、図書館、給食室、御手洗、教室があり、北校舎には、図工室、理科室、音楽室、御手洗、教室がありました。ただ一つ北校舎と南校舎が違うのは北校舎にしか洋式トイレがないということ。当時の私は、和式が苦手で洋式しか入らずにいました。クラブ活動は曜日で分かれているので、この日は北校舎には誰もいません。私は少し気味悪いなぁと思いつつも、ゆっくりと3階のトイレへと向かいました。
トイレにまつわる七不思議のお話といえば、トイレの花子さんが有名ですよね?
3階の女子トイレの扉を順番に3回ずつノックしていき、3番目の扉を3階ノックして呼びかけると現れるとか……私は怖い話が苦手でそれを思い出してしまい、急いで御手洗を済ませようと洋式がある3番目の女子トイレへと駆け込みました。

“”3階の、3番目のトイレだということを忘れて””

……私が個室に入り、洋式の蓋を開けた時。
とんでもないモノが目に映ったのです。

長く黒い髪がうようよと浮いていて、そう、女の人頭が入っていたのです。

「ヒッ」と思わず声をあげてしまい、どうしようかと戸惑っているとその頭がゆっくりとこちらを向くのです。そして目が合いそうになった時、私は急いで逃げ出しました。追いかけてこないで、お願いします、と一生懸命に図書館へと走りました。南館に渡る廊下を走り南館へ踏み込んだ後、振り向くとそこには何も無く、私はそっと息を吐いて先程の出来事を友達に話しました。
するとみんなは興味津々で、北校舎のトイレへと向かいました。私は恐る恐る友達について行き、中を確認してもらうとそこには何もないと言われ、そんなはずはないと私も確かめました。ですがそこには何もありませんでした。
私が見えたモノは何だったのか、私はわからずにいました。

この日のことを私が大人になった時、色々なモノが見える方に聞くとどうやら、見える人を驚かせようと遊んでいた霊だったそうです。ただ、目があっていたら引きずり込む可能性もあったから逃げて正解だと言われました。
私には霊感があるらしく、本来母親が継ぐはずだったものを私が受け継いでしまったらしいのです。
確かに今思えばおかしな出来事はいくつかありました。友達と怖い話をしていた時に急に金縛りにあって腕がどんどん変な方向に曲がっていくとか、次の日起きると遠くにあったはずの充電器の紐が首に巻きついていたり、とか。
……今は一時のトラウマで見えなくなっているそうですが、もしかしたら大人になるにつれて見えるようになるかもしれない、その言葉に私はずっと怯えています。

…どうか見える日が来ませんように。

カテゴリー: みんなで創る百物語